2013/7/25 第134号 : 教育評論社の最新図書

なぜ人は妖怪を信じるのか。
           『井上円了と柳田国男の妖怪学』

 <目次>
第一章 妖怪博士−−井上円了
  妖怪博士の生涯
  哲学館の創立と「妖怪学」講義
  妖怪学とはなにか

第二章 民俗学の創始
  民俗学の柳田国男
  柳田国男の妖怪学

第三章 日本人はなぜ妖怪が好きなのか
  「信じているもの」とは
  妖怪を消極的に認める国民性


三浦節夫(みうらせつお) 著
2013年7月5日発刊
189頁 税込価格1,575円


 暑い季節になると、昔の人は肝試しや怪談話に本当に怖がり、そして涼んだそうです。非科学的だと頭では理解していながら、幽霊や妖怪などの不思議な話にはつい惹かれてしまったり、怖がったりしてしまいます。今回は、NHKドラマ『ゲゲゲの女房』以来、ちょっとしたブームが続いている妖怪をテーマにした書籍をご紹介します。

 と言っても、妖怪図鑑等とは少し異なり、本書では妖怪学の創始者・井上円了(1858−1919)の研究の軌跡を中心に、人と妖怪の関係を学術的にまとめています。加えて、民俗学者の柳田国男(1875−1962)の妖怪へのアプローチ、また現代の人々が妖怪をどのように捉えているかを論じた内容となっています。

 第一章では、東洋大学の創設者である井上円了の伝記と円了が確立した妖怪学を論じています。端的に言ってしまえば、円了が哲学的思考から妖怪、そして人々の心理構造を分析したことにより、妖怪は学術的な主題となり得たということです。第二章では民俗学者・柳田国男の妖怪学について検討し、柳田の円了説への批判を引用しながら、二人の妖怪学者の論点を整理します。”人をかどわかす未知の存在”への追求心、円了と柳田が妖怪をいかに定義していったかを探っています。

 また、第三章では、妖怪を含めた日本人の宗教意識についてのアンケート結果を分析しています。「あの世を信じる」人の割合が以前よりも増加しているという2008年の結果から、いわゆるスピリチュアル・ブームなどの深層を探ります。

 現実に存在するとは信じていない人が大半だと思いますが、「本当にいたら面白いかも」と考えてしまうのが妖怪かもしれません。そう思われた方はぜひ本書で人と妖怪の関係を覗いてみてはいかかでしょうか。

著者:三浦節夫(みうらせつお)
1952年生まれ。東洋大学大学院博士後期課程修了。東洋大学ライフデザイン学部教授・井上円了記念学術センター研究員。専門は宗教社会学、井上円了研究、東洋大学史。 主な著書に『日本人はなぜ妖怪を畏れるのか』『井上円了の教育理念』『ショートヒストリー東洋大学』 

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